ここ数ヶ月、企業の担当者さんや従業員さんから
「保険証が来ないんですが…」
「資格確認書って初めて聞きました」
「病院行くときって何を持てばいいですか?」
という声が止まらなくなりました。
無理もありません。
健康保険証の廃止は、誰にとっても“初の制度大改革”。
分からなくて当然です。
だからこそ今、
正しい情報をシンプルに整理すること
が企業にも従業員にも必要になっています。
この記事では、福岡の社会保険労務士である私が、
最新の制度情報をもとに 企業が「まずここだけ押さえれば安心」 という
3つのポイントに絞って分かりやすくお伝えします。

第1章|健康保険証は“完全に廃止”。今後は資格確認が2種類だけ
政府の医療DX方針に基づき、健康保険証は段階的に終了しています。
- 2024年12月2日:健康保険証の新規発行が停止
- 2025年12月1日:既存の健康保険証がすべて失効
つまり今後、企業で入社や扶養追加の手続きをしても
紙の健康保険証は二度と発行されません。

「保険証っていつ届きますか?」
「前は2週間くらいで来てましたよね…?」
という問い合わせが起こるのは、制度よりも
社内の案内が“旧ルールのまま” だからです。
では、これから受診するときはどうするのか?
答えは ①マイナ保険証 ②資格確認書(紙) の2種類だけです。
資格確認の方法①:マイナ保険証
マイナ保険証は、従来の健康保険証に代わる“メイン”の資格確認方法です。
【制度のポイント】
- オンライン資格確認で最新の資格情報がすぐ反映
- 電子証明書が失効していても、最長3か月は利用可能
- 転職・扶養追加後の資格反映は 2〜5営業日
- 限度額適用認定証が 原則不要(後述)
「保険証が届かない=医療機関で受診できない」ではありません。
ただし入社直後は
マイナ保険証への資格反映に数日かかるため、
反映前の受診には“申立書”で対応する場合があります。

資格確認の方法②:資格確認書(紙)
マイナ保険証を使わない/使えない人には、
保険者(協会けんぽ・健保組合)が資格確認書を交付します。
【対象者の例】
- マイナ保険証を登録していない
- マイナカードの電子証明書が失効し、更新できない
- 高齢者などICチップ利用が難しい
- 紛失して急ぎで受診したい
【制度のポイント】
- 原則、自動(職権)で交付される
- 必要に応じて申請での交付も可能
- 有効期限:保険者が設定(最長5年以内)
- 到着目安:30〜50日
急ぎで使用したい場合は、
企業の労務担当に早めに伝えておくほうが安心です。

第2章|医療機関の現場ではどう扱われる?
制度移行期は、医療機関側の端末が不安定になることもあり、
「資格確認ができません」と言われるケースが実際にあります。
でも大丈夫です。
そのときの救済策はしっかり用意されています。
代替手段①:資格情報のお知らせ(マイナポータル)
マイナポータルには
加入している健康保険の情報を表示できる画面があります。
スマホで見せるだけで資格確認できるため、
反映が遅れている時期にはとても役に立ちます。
代替手段②:被保険者資格申立書
医療機関に置かれている書類で、
「私は〇〇の健康保険に加入しています」と申立すれば受診できます。

第3章|誤解が多い!「2026年3月末までの暫定措置」の正しい意味
ここが本当に誤解されているポイントです。
多く聞かれるのが、
「紙の保険証って、2026年3月まで使えるんですよね?」
「3月まで返さなくていいってことですか?」
→ 実はどちらも誤解です。

正しくはこうです
- 紙の健康保険証 → 2025/12/1で完全に失効(使えません)
- 2026/3/31までは“10割請求にしない暫定措置”がある
つまり
「失効した保険証が使える」という意味ではなく、
資格確認ができた場合に10割立替を防ぐ救済措置 です。
また、暫定措置が適用されないケースもあります。
- 資格喪失(月末退職など)
- 医療機関で資格照会が確認できない
- マイナ保険証・資格確認書の情報が古い
この場合は10割請求となる可能性があります。
従業員には
「受診する日はマイナ保険証または資格確認書を必ず持参」
と案内しておきましょう。
第4章|資格確認書の“制度・日数・トラブル”を総まとめ
資格確認書は、この制度変更で最も質問が多い分野です。
仕組みを知るだけで不安は一気に解消します。
■発行の仕組み(2パターン)
①職権(自動)交付
保険者(協会けんぽ・健康保険組合など)が
「この方は必要だな」と判断した場合、自動で送付されます。
対象になりやすいケース
- マイナ保険証を登録していない
- 電子証明書の失効によりマイナ保険証が使えない
- ICチップが読み取りづらい高齢者など
- 保険者が必要と判断した場合
※送付先は保険者によって異なり、
「本人の自宅」か「勤務先(事業所)」かで分かれます。
2,本人申請による交付
こちらは“必要なときに取りに行く”イメージです。
よくあるケース
- 紛失してしまった
- すぐ受診したいのにマイナ保険証が使えない
- 自動送付の対象にならなかった
申請方法は保険者によって違いますが、
協会けんぽは比較的シンプルで、
組合健保は専用の申請書がある場合が多いです。
■よくあるトラブル(ベスト3)
制度というより、実務で“よくある困りごと”です。
- 住所の登録ズレ → 郵便が戻ってしまう(「資格確認書が届きません」という問い合わせの9割がこれ!!)
- 会社に届くのか、本人に届くのか分かりづらい
- 紛失・返却漏れが多発(退職・扶養削除の際は返却対象になります)
特に住所ズレは圧倒的に多いため、
企業での案内文ではなるべく
「住所変更の届け出必須」を添えると◎です。
第5章|限度額適用認定証の取り扱いが大きく変わります
限度額適用認定証(医療費の自己負担を抑えるための制度)は、
今回の制度変更で 取り扱いが一番ラクになる部分 です。
■マイナ保険証 →限度額認定証は“原則不要”に
医療機関のオンライン資格確認により、
限度額区分が自動反映されます。
そのため、
「入院前に限度額認定証を取りに行く」
という手間が基本的になくなります。
■資格確認書 → 原則同じだが例外あり
資格確認書を使って受診する場合も、
多くの医療機関では オンライン資格確認があるため限度額認定証は不要 です。
ただし、ここだけ注意。
医療機関がオンライン資格確認を導入していない場合、
従来どおり認定証が必要になります。
地方病院や小規模クリニックは導入が遅れていることがあるため、
受診前に事前に確認しておくと安心です。
■ 低所得区分など特殊区分は従来どおり申請が必要
ここは制度改定後も変わらないポイント。
- 住民税非課税世帯
- 特定の所得区分に該当する場合
- 世帯合算の適用を受ける場合
こうした特殊区分では、
必ず限度額認定証の取得が必要 です。
マイナ保険証でも資格確認書でも、
この部分は“自動反映”ではなく「申請」になります。
第6章| 企業が“いますぐ”見直すべき実務ポイント
ここまでをふまえて、
“いま企業がすぐに見直すことでトラブルを減らせる”
ポイントを3つにまとめました。
① 入社案内の文言を必ず修正する
多くのトラブルは、
企業側の案内文が“紙の保険証が届く前提”のままになっていることが原因です。
今後はもう紙の保険証は発行されません。
まず最初に見直したいのが以下の文言:
- 入社案内
- 社内の総務ガイド
- 福利厚生ガイド
- 雇用契約書の付属書類
- 従業員ハンドブック
「加入手続き後、2週間ほどで保険証が届きます」
この文言は今すぐ削除・修正が必要です。
代わりに、
- マイナ保険証がそのまま資格確認になること
- 資格反映には2〜5営業日かかること
- 紙の保険証はもう届かないこと
これを明確に書くだけで、
従業員からの不安や問い合わせがほぼなくなります。

② 資格確認書の“保管・返却フロー”を明確にする
資格確認書は、紛失・返却漏れが本当に多いのが現実です。
特に会社宛に届く保険者の場合、
管理ルールを決めておかないと
「誰の分がどこにあるのか分からない」という状態になりやすいです。
【保管フロー】
- 会社に届いた資格確認書を“誰が受け取るのか”を決める
- 従業員へ渡した日を控えておく(ExcelでOK)
- 不在時の対応担当者も決めておく
【返却フロー】
- 退職時のチェックリストに「資格確認書:回収済/未回収」を追加
- 紛失の場合は、本人 → 会社 → 保険者 の流れで再交付手続き

③ 限度額認定証の案内を“新ルール”に更新する
限度額適用認定証は、今回の制度変更で大きく変わったポイントです。
従来は
「入院前に必ず限度額認定証を申請して提出する」
のが当たり前でした。
でも今は違います。
企業が押さえておくべきポイントは
- マイナ保険証は原則申請不要
- 資格確認書は原則不要だが、医療機関の設備状況により例外あり
- 特殊区分は申請が必要
- 入社直後は資格反映までタイムラグ(2〜5営業日)がある
企業としては、
こうした“新ルール”をまとめた案内を整えておくことで、
従業員が入院・手術のときに混乱しないようにできます。

まとめ|制度が変わる時こそ、“安心できる情報”が大事
健康保険証の廃止は、多くの人にとって初めての経験です。
制度変更を迎えると、企業にも従業員にも不安が出てきます。
だからこそ私は、
正しい情報を、やさしく、実務で迷わない形で届けること。
これを大事にしています。
今回の記事が、
企業の案内にも、従業員さんの安心にもつながれば嬉しいです。
「うちの場合はどう説明すれば?」という個別相談も歓迎です。
いつでも気軽に聞いてくださいね。
ではまた、次の記事で。


